■現場施工監理・管理
 塗装工事と検査
塗装の必要性…鉄や木の塗装
塗装の下地処理…素地調整・ケレン
塗料の種類…組成・種類と特性
塗装の設計…塗装系と塗料の組合わせ
塗装の塗替…塗替えの設計
塗装の施工…施工に際しての留意点
■塗装の必要性 鉄や木の塗装
 言うまでもなく、外観の見栄えと素材の腐食保護である。
 鉄錆は、鉄と酸素の化学反応で生成される酸化第二鉄である。大気中の水分に含まれる酸素や直接的な水以外にも、発錆促進の因子は、以下も挙げられる。
1 温度の高い環境、更に温度差の激しい環境。
2 湿度の高い環境は、結露が高まり水分や塩素イオン、亜硫酸ガスが影響する。
3 海近くで飛沫(ひまつ)塩分や、道路等の凍結防止剤は、水溶性の塩化第一鉄が生じ発錆し繰返されると影響する。
4 大気中の工場や自動車の排ガスに含まれる亜硫酸ガス・炭酸ガスが水分と反応し、硫酸・炭酸となり影響する。

■塗装の下地処理 素地調整
 塗装前には、素材の塗布箇所をあらかじめ下ごしらえしなくてはならない。塗装と素地との付着を良好にするためである。
 下地処理の総称をケレン又は素地調整と言い、下記の種類がある。尚、新規に塗布する場合と、すでにある塗面を再度塗装する場合の2種類ある。
ケレン種別 下地状態 調整程度 調整方法
1種ケレン 黒皮・赤錆のある状態 完全除去 ブラスト・酸洗い
2種ケレン 既設塗膜の劣化・腐食が激しい状態 窪み部のみ残存 ワイヤーホイール等の電動工具
ワイヤーブラシ、スクレパー等手工具
3種ケレン 部分的に発錆あり、塗膜の良好部あり 発錆除去・良好部清浄
4種ケレン 塗膜のみが変色・白亜化 良好部の清浄

■塗料の種類 塗料の組成、種類
 そもそも、塗料はどんな成分から出来ているのか。そんな疑問を抱いた事はないだろうか?塗料の成分は、顔料・展色材(ビヒクル)・添加剤・溶剤の四種類からなる。
組成種類 解     説
顔料 着色料。一般的には、水・油・溶剤いずれにも溶けない化合物である。展色材と反応して塗膜を形成する。
展色材 ビヒクルとも言う。水や酸素の透過をさえぎる物質。顔料と反応し塗膜を形成し均一に付着を助ける。
添加剤 乾燥促進、顔料の沈殿防止、平滑性の寄与などの効果を促進。
溶剤 ビヒクルを溶解し流動性を得るために用いられ、塗布後に蒸発する有機溶剤が一般的。
 上記の成分を混合したものが塗料である。用途に応じて様々ある。
塗  料  名 用  途 / 特  徴 長  所/短  所
長曝(ばく)形エッチングプライマー
JIS K 5633 2種
1種ケレン後の鋼表面に使用。
2液性である。主剤(顔料):ポリビニルプチラール樹脂、フェノール樹脂、クロム酸塩顔料。
副剤(添加剤):リン酸、水、アルコール
屋外に三ヶ月程度さらしても大丈夫
ジンクリッチプライマー
JIS K 5553 1種,2種
長曝形よりも防錆性に優れ速乾性である。
顔料は亜鉛末で含有率が高く比重が大きい。
工場用。上塗剤の選択肢が多い。
屋外に6ヶ月程度さらしても大丈夫
高湿度中の塗布はふくれを生じやすい。
引火性である。
鉛系錆止めペイント 亜酸化鉛
JIS K 5623
1種(ビヒクル:乾性油) 2種(ビヒクル:ワニス) 顔料名+錆止めペイントと呼称される。
2種は速乾だが、1種よりも錆止め効果は劣るが、塩基性クロム酸鉛は、他の2種類の1種に比較して、2種でも効果大。
従って、錆止め効果は塩基性クロム酸鉛が一番大きいし用途も幅が広い。
現場一般用  顔料亜酸化鉛20%含有
塩基性クロム酸鉛
JIS K 5624
1種(ビヒクル:乾性油) 2種(ビヒクル:ワニス)
一般兼用可  顔料クロム酸3〜4.5%、鉛17〜27%含有
シアナミド鉛
JIS K 5625
1種(ビヒクル:乾性油) 2種(ビヒクル:ワニス)
工場補修用  顔料シアナミド鉛17%以上含有
塩化ゴム系塗料
JIS K 5639
1種ケレン後の鋼表面に使用。
顔料は塩化ゴム、塩化ポリプロピレン
溶剤はトルエンを使用。
速乾性に富む。低温(0℃以上)塗布可。
厚膜可。付着性・耐水性・耐薬品性に優れている。
油性塗膜の重ね塗り不可。
エポキシ樹脂塗料
JIS規格外
1液性と2液性の2種類がある。
2液性の主剤(顔料)はエポキシ樹脂。
副剤(添加剤)は硬化剤など。
速乾性に富む。低温(5℃以上)塗布可。
厚膜可。付着性・耐水性・耐薬品性に優れている。
低温時の乾燥遅い。白亜化しやすい。
タールエポキシ樹脂塗料
JIS K 5664 1種〜3種
タール:エポキシ=2以上:1の含有。
ビヒクルは、ワニス。
水中・地中・内部塗装向き
付着性が良い。効果は、エポキシ樹脂よりも良く耐水・耐薬品抜群。
乾燥時間が長い。紫外線に弱い。色相限定あり
MIO塗料
フェノール樹脂 JIS K 5554
エポキシ樹脂 JIS K 5555
MIOとはリン片状酸化鉄であり顔料である。
ビヒクルはフェノール樹脂が多く、エポキシ・塩化ゴムもある。
油性塗料の上塗可。耐久性に優れる。
色相に限りがある。
長油性フタル酸樹脂塗料
JIS K 5516 2種
通常、中塗・上塗の塗料がこれである。
油性調合ペイントに比べて乾燥が速い。
下塗後速やかに塗布しないと付着が悪い。
耐候性良い。作業性が良好でスプレー塗布可能。
耐水性悪い。アルカリに最悪。
ポリウレタン樹脂塗料
JIS K 5657
2液性の塗料。主材:ポリオール系樹脂
副剤は硬化剤(非黄変性イソシアネート)。
中塗・上塗塗料である。
耐候性・耐水性・耐薬品性・耐熱性に優れている。厳しい腐食環境に最適。
弗素(フッ素)系樹脂塗料
JIS K 5659
2液性の塗料。主材:フッ素系樹脂
副剤は硬化剤(非黄変性イソシアネート)。
耐候性・耐水性・耐薬品性・耐熱性に優れている。厳しい腐食環境に最適。
塗膜色・光沢の長期間保持に最適。
ポリウレタン樹脂塗料の代用品。
シリコンアルキド樹脂塗料
JIS規格外
アルキド樹脂をシリコン樹脂で変性して作った樹脂をビヒクルとした塗料。 塗膜色・光沢の長期間保持に最適。
長油性フタル酸樹脂塗料の代用品。

■塗装の設計 塗装系と塗料の組合わせ
(1)塗装系
 一般的に塗装は、重ね塗りをして塗装系として防錆効果を発揮します。下記は、塗装系の一般例(外面用)で、様々な種類の塗料を用いた場合である。尚、同一塗料の重ね塗りを施した塗装系では、タールエポキシ塗料等がある(下記塗装系D参照)。
最適塗料 解    説
素地調整後
プライマー
長曝形エッチングプライマー 速乾性、一時防錆効果を狙い、次の錆止め塗料との付着向上に欠かせない。
下塗
(工場塗装)
錆止めペイント
2回塗布
錆止後にMIO塗布する場合あり 塗料中の顔料成分が大半で不均一性を調整するために2度塗りとする。直射日光に弱いので長期間屋外に曝してはいけない。
中塗
(現場塗装)
樹脂系塗料 下塗と上塗の付着性を向上するための塗料。
上塗の溶剤で下塗を侵さないための塗料。
上塗
(現場塗装)
ビヒクル分の多い塗料。塗膜強度が高く、腐食性に優れ、光沢や色の保持性が良い塗料が要求される。
(2)塗料の選定
 素地調整の程度、環境状況を考慮した上で塗料を選定する必要がある。昨今では、組合せがある程度、塗装系で定められた為、使用するメーカーが適合するものか否かと、材料費を抑える方に目が行きがちである。

 例えば、箱桁内での塗装は、日光は当たらないが湿気を伴い侵入水の影響もあるため、耐湿・耐水性が要求される。そこで、塗替えも面倒な点を考慮し、厚膜として最適な塗料を考えるとタールエポキシ樹脂塗料が良い。しかし、箱桁上部でグースアスファルト舗装を行う場合は200℃近くに達する為、熱影響を受け、ハガレ・フクレの原因となる。
 その結果、箱桁上部にあたる鋼床裏版の塗装には、耐熱性の良いジンクリッチペイントが最適となる。このような方法で選定する。

 塗装系は機関によって様々あるが、下記は日本道路協会「鋼道路橋塗装便覧」(平成2年6月日本道路協会発行)より抜粋した塗装系である。
※素地調整…表面清浄度(仕上等級)をISO(国際単位)で規定している。
日本で規定しているSPSSとは、日本造船研究協会(JSRA)「塗装前鋼材表面処理基準」を表す。
環境
区分
塗装
区分
工場前処理 工場塗装 現場塗装
素地
調整
プライマー
2次
素地
調整
下塗
1回目

下塗
2回目

下塗
3回目

中塗 間隔 上塗







1






SIS
Sa2.5

SPSS
Sd2 Sh2
長曝形
エッチング
プライマー
130g/u
(15μm)
総合膜厚
には含ま
ない。

スプレー塗









SIS
St3

SPSS
Pt3
鉛系錆止
ペイント
1種
170g/u
35μm
スプレー塗
2〜10日 鉛系錆止
ペイント
1種
170g/u
35μm
スプレー塗
6ヶ月 長油性
フタル酸
樹脂塗料
中塗
120g/u
30μm
刷毛塗
2〜
10日
長油性
フタル酸
樹脂塗料
中塗
120g/u
30μm
刷毛塗
2 2〜
10日
フェノール
樹脂
MIO塗料
300g/u
45μm
スプレー塗
12ヶ月
3 6ヶ月 シリコン
アルキド
樹脂塗料
中塗
120g/u
30μm
刷毛塗
シリコン
アルキド
樹脂塗料
中塗
120g/u
30μm
刷毛塗
4 2〜
10日
フェノール
樹脂
MIO塗料
300g/u
45μm
スプレー塗
12ヶ月
やや
厳しい
環境



1 塩化ゴム
系塗料用
170g/u
35μm
刷毛塗
塩化ゴム
系塗料用
150g/u
30μm
刷毛塗
厳しい
腐食
環境
塗装
区分
工場前処理 工場塗装
プライマー
2次
素地
調整
下塗
1回目
ミストコート 下塗
2回目

下塗
3回目

中塗
上塗



1 無機
ジンクリッチ
プライマー
200g/u
(15μm)
総合膜厚
には含ま
ない。

スプレー塗
6

動力工具
処理

SIS
Sa2.5

SPSS
Sd2 Sh2
無機
ジンクリッチ
ペイント
700g/u
75μm
スプレー塗

間隔
1〜10日
ミスト
コート
160g/u
スプレー塗

間隔
1〜10日
エポキシ
樹脂塗料
下塗
300g/u
60μm
スプレー塗
1〜
10日
エポキシ
樹脂
MIO塗料
360g/u
60μm
スプレー塗
12ヶ月 現場塗装
ポリウレ
タン樹脂
塗料用
中塗
140g/u
30μm
刷毛塗
1〜
10日
ポリウレ
タン樹脂
塗料用
上塗
120g/u
25μm
刷毛塗
2 エポキシ
樹脂塗料
下塗
300g/u
60μm
スプレー塗
1〜
10日
ポリウレ
タン樹脂
塗料用
中塗
170g/u
30μm
スプレー塗
ポリウレ
タン樹脂
塗料用
上塗
140g/u
25μm
スプレー塗
3 エポキシ
樹脂
MIO塗料
360g/u
60μm
スプレー塗
12ヶ月 現場塗装
フッ素
樹脂
塗料用
中塗
140g/u
30μm
刷毛塗
1〜
10日
フッ素
樹脂
塗料用
上塗
120g/u
25μm
刷毛塗
4 エポキシ
樹脂塗料
下塗
300g/u
60μm
スプレー塗
1〜
10日
フッ素
樹脂
塗料用
中塗
170g/u
30μm
スプレー塗
フッ素
樹脂
塗料用
上塗
140g/u
25μm
スプレー塗
環境
区分
塗装
区分
前処理 工場塗装
素地調整 プライマー 間隔 2次素地調整 第1層 間隔 第2層












1 ブラスト処理

SIS
Sa2.5

SPSS
Sd2 Sh2
長曝形エッチング
130g/u(15μm)
総合膜厚には含まず
スプレー塗
1日〜
3ヶ月
動力工具処理

SIS
St3

SPSS
Pt3
タールエポキシ樹脂
塗料1種
360g/u
120μm
スプレー塗
1〜10日 タールエポキシ樹脂
塗料1種
360g/u
120μm
スプレー塗
2 変性エポキシ樹脂
塗料内面用
450g/u
120μm
スプレー塗
変性エポキシ樹脂
塗料内面用
450g/u
120μm
スプレー塗
3 無機ジンクリッチ
プライマー
200g/u(15μm)
総合膜厚には含まず
スプレー塗
2日〜
6ヶ月
タールエポキシ樹脂
塗料1種
360g/u
120μm
スプレー塗
タールエポキシ樹脂
塗料1種
360g/u
120μm
スプレー塗
4 変性エポキシ樹脂
塗料内面用
450g/u
120μm
スプレー塗
変性エポキシ樹脂
塗料内面用
450g/u
120μm
スプレー塗

■塗装の塗替 塗替え設計
 上記までの「塗装の設計」は、主として新設される場合に用いられる為、塗替えの場合の留意点を以下に記す。
1 素地調整は動力工具を主に用いて、場合によってはワイヤブラシ・サンドペーパー・ウエスを用いる。
2 活膜は再使用。旧塗膜と同種・同系の塗料を使用する事が原則。
3 刷毛塗りが原則。広範囲に渡る場合はスプレーも可能。
4 活膜上に影響する塗料は使用しない。旧塗膜の活膜が油性で塗替塗料がエポキシ樹脂塗料では使用不可。

■塗装の施工 施工に際しての留意点
(1)施工事前確認
 塗装施工に際して留意点を以下に記す。施工管理手法に相当する。
1


5℃以下の気温では施工してはならない。低温乾燥性塗料のみ可。
2 相対湿度85%以上では施工してはならない。
3 降雨・降雪時もしくは、直後・予測される直前の施工はしてはならない。
4 風速の指定は無いが、強風時の施工も塗料飛沫や飛散物付着などの為、不可。
5 炎天下で塗面が温度上昇し耐熱性以外の塗料は泡を生じ使用できない。
6 素地
調整
塗装する鋼の異物(ヒューム汚れ、溶接スパッタ、アークストライクの窪み、クランプ傷、打痕、油脂、塵埃「じんあい」)や黒皮、錆を除去したかの確認。
7 金属前処理 素地調整完了後、速やかに金属前処理が必要である。
8 処理中の塗膜が損傷した場合の補修方法はプライマーによって変わる。
・エッチングプライマーは、欠陥部をケレン後、直接錆止めペイントを塗布し補修する。
・ジンクリッチプライマーは、欠陥部をケレン後、ジンクリッチプライマーを塗布し補修する。
9 無機ジンクリッチプライマーやペイント・エッチングプライマーの酸液など、金属容器と化学反応を起す恐れがある場合は、ガラスかプラスチック容器を使用する事。また、撹拌機の羽の材質も考慮する。
10 塗布 錆止めペイントは顔料の比重が大きいため、十分撹拌する必要がある。
11 狭い場所等によっては、換気・防爆照明を使用する。
12 メーカー指示による使用方法を十分理解し作業に当たる。
(2)施工計画書
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